「立っていると腰が張ってくる」「お腹を前に突き出して立っていると言われた」。反り腰のお悩みは、スタジオでもとてもよく伺います。多くの方が、腰を鍛えたり伸ばしたりしようとします。でも、腰そのものに手を加える前に、少し視点を変えてみてほしいのです。反り腰の腰は、弱いのではなく——働きすぎていることが多いからです。
反り腰って、どんな状態?
反り腰は、骨盤が前に傾いて、腰の反りが強くなった状態を指すことが多い姿勢です。お腹が前に出て、腰の筋肉がいつも張っているように感じられます。立っているだけで疲れる、という方も少なくありません。
腰が張るのは「お腹の奥」がサボっているサインかも
姿勢を支えるとき、本来はお腹の奥にある深い筋肉が働いてくれます。ここがうまく使えていないと、その仕事を腰の筋肉が肩代わりします。つまり、腰は弱いのではなく、働きすぎている。だから、腰をさらに鍛えると、張りがかえって強くなることさえあるのです。
私自身、看護師時代の夜勤続きで腰を痛め、朝、靴下を履くのもつらい時期がありました。当時はとにかく腰を揉んだり伸ばしたりしていましたが、その場しのぎでした。楽になり始めたのは、腰ではなくお腹の奥を使えるようになってからです。ピラティスを始めて、いちばん驚いた実感でした。

やりがちな反り腰対策が、逆効果になることも
よかれと思ってやっている対策が、腰の張りを強めていることがあります。少人数のレッスンで隣から見ていて、とくに多いと感じる3つを挙げてみます。
| よくある反り腰対策 | 起きがちなこと | sou での考え方 |
|---|---|---|
| 腹筋(上体起こし)を頑張る | 表面の筋肉ばかり優位になり、反りが強まることも | まず息を吐いて、お腹の奥を薄く働かせる |
| ストレッチで腰を伸ばす | その場は楽でも、支える力は戻らない | ゆるめるのと、担当を戻すのをセットで |
| 胸を張って良い姿勢を作る | 腰で反って代償し、張りが戻りやすい | 肋骨を軽く締めて、お腹の奥から立つ |
お腹の奥を思い出す、いちばんやさしい練習
ピラティスでは、呼吸を使ってお腹の奥の筋肉をやさしく目覚めさせていきます。強く力むのではなく、息を吐きながら「うっすら働く」感覚を探すのがコツです。おうちでも試せる練習をご紹介します。
- 01
あおむけで、ひざを立てる
腰と床のあいだに手のひら1枚ぶんの隙間ができるくらいが、自然な位置です。反りすぎ・つぶしすぎのどちらもしなくて大丈夫です。
- 02
鼻から吸って、肋骨を横にひろげる
肩が上がらないところまで。お腹を膨らませるのではなく、肋骨が横にひらくのを感じます。
- 03
口から吐きながら、お腹を薄くする
下腹がうっすらへこみ、腰まわりが安定する感覚があれば十分です。これが、お腹の奥が働いているサインです。
「反らないで立つ」を練習する
お腹の奥の感覚がつかめてきたら、それを立った姿勢でも思い出してみます。胸を張ろうと意識しすぎると、かえって腰が反ってしまいがちです。息を吐いてお腹の奥を軽く感じるだけで、腰の張りがふっとゆるむ方もいらっしゃいます。リフォーマーを使うと、寝た姿勢からこの感覚を練習できるので、腰を使わずにお腹の奥だけを働かせる感じがつかみやすくなります。
腰ばかり気にしていたのに、レッスンでやるのはお腹の奥のことばかりで不思議でした。でも、帰り道に立っているのが、すこし楽だったんです。
おわりに
腰の張りは、からだからの小さな知らせです。差出人は、案外べつの場所——お腹の奥にいます。腰をせめる前に、そっと耳をすませてみる。その視点を、一緒に育てていけたらと思います。
Author

新井 遥
sou pilates studio 主宰/ピラティスインストラクター
金沢・東山のマシンピラティススタジオ sou 主宰。元看護師。呼吸とともに深い筋肉へ意識を向け、その日のからだに正直に動く時間を、おひとりずつご案内しています。
読んでくださって、ありがとうございます。
からだのことは、どうぞ直接ご相談ください。


